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東京高等裁判所 昭和46年(ネ)537号 判決 1972年8月31日

理由

一  当裁判所は、第一審原告の主位的本訴請求(附帯請求を含む)を一部正当とするものであつて、その事実認定及びこれに伴う判断は、次に附加し、補足するほか、原判決がその理由中に説示するとおりであるから、これ(原判決九枚目―記録二五丁―表二行目から原判決一五枚目―記録三一丁―裏二行目「棄却すべき、」まで)を引用する(但し、末尾を「棄却すべきである。」と改める)。

1  原判決一一枚目―記録二七丁―裏一〇・一一行目「右契約上の義務に違反するといわなければならない。」とある後に行を改めて、次のとおり加える。

「事実摘示一2の第一審被告の主張は、持田によつてプライバシーを侵害されたことによりその使用者に対し不法行為に基づく損害賠償債権が発生することを否定する趣旨のものであるというべきであるが、右主張が債務不履行につき債務者の責に帰すべき事由がなかつたという主張を含むものであるとしても、《証拠》によれば、佐藤は、本件貸金庫の開扉を要求した当時第一審原告の夫であつたが、B正鍵を所持せず、また、第一審原告は、特に旧姓の平山万里子名義で本件貸金庫を借用し、所定の代理人届もしないで、夫に対する秘密の保持を図つたのであり、第一審被告の従業員である持田は、佐藤がB正鍵を所持せず、所定の代理人でもないことを知り、かつ、これらの事実から同人が第一審原告に無断で開扉を求めることを察知しながら、その要求に応じたのであるから、第一審被告の履行補助者である持田らの本件開扉行為には第一審被告の責に帰すべき事由がないということはできない。」

《2~3省略》

4  原判決一五枚目―記録三一丁―表七行目の後に次のとおり加える。

「第一審被告は、仮に同被告の行為が債務不履行であるとしても、弁護士費用は損害に入らないと主張し、仮にそうでないとしても、本件における弁護士費用として金一〇万円は相当でないと抗争するが、その前段は、債務不履行に基づく損害賠償請求においても不法行為に基づく損害賠償請求の場合と別異に解する理由はないから、採ることができず、その後段が金五万円以下の部分について採用し難いことはさきに認定したところから明らかである」。

二  よつて、原判決は相当であつて、これに対する第一審原告及び被第一審告の各控訴はいずれも理由がないから、民訴法三八四条一項によつてこれを棄却

(裁判長裁判官 西川美数 裁判官 園部秀信 森綱郎)

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